音の速度とは

音は空気中で300m/sで伝わる。

温度が高いほどより早くなり、低いとより遅くなる。

時速にすると、標準大気で1225km/hでこれをマッハ1の速度という。

ジェット戦闘機は音速の二倍すなわちマッハ2で飛ぶことができる。

 

ここで二人乗りの戦闘機の中で二人のパイロットが話した場合、

声はどう伝わるだろうか。

もしも戦闘機の中の音つまり声が後部座席から前のパイロットに向かって

「敵機発見」と叫んでも

音の伝搬速度が地球に対してマッハ1を超えることができないならば

マッハ2で前進するジェット機の中で後部座席から出た音波は前に届くことはなく

敵機に気づかない前のパイロットは反応することができずに撃墜されてしまったであろう。

 

ジェット機のように一般市民が経験しがたい例ではなく

コンコルドのように超音速で飛ぶ旅客機の中での話のほうが分かりやすいだろう。

進行方向にいるキャビンアテンダントに向かって客が「ウィスキーが飲みたい」と言っても、

後部にいるキャビンアテンダントに向かって「到着は何時か」と言っても同様に

会話できることだろう。

 

それは音が運動する機体に対して音速300m/sの相対速度で伝搬することを意味する。

それがもし地上に対して300km/h という絶対速度でしか伝わらないとしたら

飛行機の速度が増すにつれて音速は進行方向では遅くなり逆の方向ではどんどん速くなって

マッハ1に達したときに進行方向では前に進めず、逆方向ではマッハ2の速度で音が伝わることになる。

しかしそうした事象はいままで聞いたことがない。

 

それは結局

機内では機体に対して音速で伝わっているということであり

地上から見ると進行方向では飛行機の速度+音速

逆方向では飛行機の速度-音速で音が伝搬するのであろう。

 

そしてこの場合、考慮しなければならないのは

飛行機の速度と音の伝搬速度とは異質のものであるということである。

 

飛行機は実際に物が動いていく速度であるが

音の伝搬速度は空気を構成する分子の状態変化が伝わっていくことなので

空気分子がその速度で移動することを意味しない。

たとえてみれば

前者は模型の電車が走っていく速さであるが

後者はドミノ倒しのドミノが倒れていく速さと言えるだろう。

 

続く